Sphere System Consulting ltd. スフィアシステムコンサルティング株式会社

Vol.126 IT業界の多重下請構造 負の連鎖を断ち切るには?

 コラム

IT業界の多重下請構造 負の連鎖を断ち切るには?

 

IT業界の構造が多重下請構造になっていることはご存知の方も大勢いると思います。ITベンダー企業にシステム開発を依頼すると、そのITベンダーは作業の一部を外部協力会社へ依頼します。

 

プロジェクトが大規模であればあるほど、外部協力会社の数は増え、2次請け、3次請けというように多重構造が出来上がります。この構造こそが「ITゼネコン」で、そこで働く人員を「IT土方」と揶揄する原因となっています。

 

この構造は、システムの発注側からすれば見えない世界なので一見何の関係もない話のように聞こえます。しかし、IT業界が多重構造であればこそ大事なのは上階層ということを忘れてはいけません。

 

ITプロジェクトで、発注側がITベンダーに仕様変更をお願いする時、発注側の立場、すなわち金を払う立場だからといって強気な姿勢で交渉することは良くある話です。

 

ITベンダー側は、金さえ払ってもらえれば・・・という理由で要求を受け入れる場合が多いでしょう。しかし、その裏で多重下請構造があるため、そんな単純な話では済まないのです。

 

安易に仕様変更のお願いを受け入れるということは、多重下請構造の中で組み上げられた土台を覆すような一大事となります。緻密に計算して組み上げたブロックを一度壊して再度組みなおすという話になります。組み直しをためらい、そのまま作業を続行すれば、必ずどこかでしわ寄せがきて破綻します。

 

ところが、事情を知らない発注側は、「お金を払うのだから」「ちょっとの変更くらい問題ないはず」といった前提で話を進め、受けるITベンダー側も「お金をもらえれば」「お客様の言うことなら」といった持論で要求を受け入れてしまいます。

 

その結果何が起こるのかというと、下請けへ無理な仕事を振り長時間労働が慢性化し生産性が下がります。ほんのちょっとの変更依頼どころか、自らの指示がプロジェクトを破綻に導く決定打となってしまいます。発注者が自覚も無く自らの手でプロジェクトを壊すというのは笑えない話ですが、多くの失敗プロジェクトの真実です。

 

安易にお客様の要望を受けるITベンダーに問題があることは事実です。
ITベンダーがあまりにも弱腰で、お客様の御用聞きに成り下がっていては意味がありません。ITベンダーにも問題を認識し共に解決を目指してもらう努力が必要ですが、発注側としてもこの問題を真摯に受け取らねばなりません。

 

ネットで情報が調べられる今、発注側が「知らなかった」せいで自分で自分の首を絞めるような失敗は終わりにしなければなりません。かつてのようにITベンダーの言いなりになる時代ではありません。ITベンダーが言う言葉が本当かどうか判断できるようになった時代なのです。

 

発注側がITベンダーと交渉の場を持つ時、相手はおそらくITベンダー側の営業担当かプロジェクトマネージャーでしょう。その交渉相手が本当にプロジェクト全体が見えているのかを見極めなくてはいけません。

 

発注者側にとって、立場の弱い人たちに横柄に振る舞う人たちと一緒に仕事をすることは良い事でしょうか?

 

IT業界の多重下請構造に利権が生まれ、そこにしがみ付く勢力がある以上は、簡単には無くなりません。ITプロジェクトにおける、下請けを安く買い叩く負の連鎖の最上流は発注側にあります。