Sphere System Consulting ltd. スフィアシステムコンサルティング株式会社

Vol.125 ストックデールの逆説から見るITプロジェクト

 コラム

ストックデールの逆説から見るITプロジェクト

 

ストックデールの逆説とは、「ビジョナリー・カンパニー 2 – 飛躍の法則」(ジェームズ・C・コリンズ著)という書籍の中で書かれている概念です。ベトナム戦争中のアメリカ軍人だった人物、ジェームズ・ストックデール氏は、1965年から73年まで8年間も捕虜として生活をし、釈放されるかどうかも分からない状況を最後まで生き抜いた人です。

 

彼は、生き残った秘訣をこのように語っています。

 

「わたしは結末について確信を失うことはなかった。ここから出られるだけでなく、最後にはかならず勝利を収めて、この経験を人生の決定的な出来事にし、あれほど貴重な体験はなかったと言えるようにすると」

(ビジョナリー・カンパニー 2 – 飛躍の法則より)

 

そして、どのような人物が生き残ることができなかったのか?との問いに対する答えは、

 

「楽観主義者だ。そう、クリスマスまでには出られると孝える人たちだ。クリスマスが近づき、終わる。そうすると、復活祭までには出られると考える。そして復活祭が近づき、終わる。つぎは感謝祭、そしてつぎはまたクリスマス。失望が重なって死んでいく」

(ビジョナリー・カンパニー 2 – 飛躍の法則より)

 

と語りました。

著者のジェームズ・C・コリンズは最後にこう結んでいます。

 

「これはきわめて重要な教訓だ。最後にはかならず勝つという確信、これを失ってはいけない。だがこの確信と、それがどんなものであれ、自分がおかれている現実のなかでもっとも厳しい事実を直視する規律とを混同してはいけない」

(ビジョナリー・カンパニー 2 – 飛躍の法則より)

 

著者のコリンズはこのエピソードを「ストックデールの逆説」と呼びました。

 

さて、ここからが本題のITプロジェクトの話です。
ITプロジェクトの現場では先ほどご紹介した「ストックデールの逆説」に照らし合わせたダメな事例が多いのです。

 

IT導入後の未来を描く時、「あの問題が解決される」「あれもできる」「これもできる」と楽観的な考えを抱きます。しかし実現の前には、コストの問題があり、そして何よりも大事な、そもそも導入できるかどうか、導入したITをちゃんと使いこなせるかといった現実的な問題があります。

 

ダメなITプロジェクトは、「IT導入の計画は描いた。発注先のITベンダーも決めた。あとは自社のIT部門とITベンダーによろしく任せた」で終わってしまいます。

 

これは即ち、ストックデールの逆説で言うところの「生き残れない楽観主義者」と同じです。

 

システムを導入するにしても、導入プロジェクトを遂行できるプロジェクト体制が確立できるかどうかといった現実的な問題から目をそらすことはできません。ITプロジェクト中に起こるトラブルも担当者が頑張って解決してくれるはずと思っていても思うようにはいきません。

 

ITプロジェクトのほとんどは経営方針に直結する為、担当者に丸投げして済む問題ではないことは当ブログでも繰り返し述べてきました。

 

楽観主義はいけないことではありませんが、楽観主義「だけ」では駄目です。
自社のIT部門や発注先ITベンダーを信頼するのは構いませんが、失敗する可能性もあることは当然考えておかねばなりません。

 

失敗ITプロジェクトは、責任の所在がどこにあるのか分らなくなるのが通例ですが、その原因は「現実を直視できていないこと」に起因します。

 

例えば、前例のないチャレンジングなプロジェクトだとしたら、失敗には寛容であるべきです。失敗しながらでも改善しつつそれでも前に進む事が求められます。逆に、ミスがあれば業務が止まってしまうようなプロジェクトだとしたら、慎重には慎重を重ね、なるべくリスクを追わないように進めなければなりません。

 

現実が見えていないという事は、上記の例のようなどちらの方針かの意思表示ができていないのです。現実が見えておらず、その結果として方向性が定まらないから簡単な楽観論に流されます。

 

信念は失ってはいけませんが、同時に現実を直視することも失ってはいけません。
ストックデールの「逆説」とありますが、楽観視と現実視は2つでひとつのセット、表と裏と考えたほうが良いでしょう。片手落ちになることで失敗するということを忘れないようにしましょう。