Sphere System Consulting ltd. スフィアシステムコンサルティング株式会社

Vol.118 生命線は発注側のITプロジェクト人員計画にあり

 コラム

生命線は発注側のITプロジェクト人員計画にあり

 

ITプロジェクトへの人員の割り当ては、負荷の少ない時期は少人数で運営し、負荷が大きくなれば人数をアサインすればよいという考え方が一般的ですが、すべてにおいて言えるものではありません。

 

ITプロジェクトに対する考え方は、発注側企業と受注側であるITベンダーで分けて考える必要があります。

 

一般的なプロジェクトマネジメントの考え方は、ITベンダー側の開発工程を主たる管理対象としているため、追加の人員計画は想定内の話です。プロジェクト人員のピークはプログラムの開発工程であり、プロジェクト開始時の人数から増えていくことは計画通りなのです。

 

ITプロジェクトが危機的状況となり、いわゆる「炎上」状態になると、そこへ「火消し」のための追加人員が投入されますが、これは、人員の追加そのものが問題なのではなく、計画通りに人員を追加できていないことによって別の問題を引き起こすことがいけないわけです。

 

しかし、発注側にITベンダーと同じ理屈がそのまま通用するかといえば、そうではありません。発注側の人員追加とITベンダー側の人員追加を同列で考えることが出来ない理由があります。

 

「戦略」と「戦術」に例えると、ITプロジェクトにおける発注側の仕事は「戦略」が担当で、受注側であるITベンダーの仕事は戦略を具体的に実現する「戦術」が担当となります。

 

発注側が担当する「戦略」は、ITプロジェクトよりさらに上位概念である経営戦略までも含みます。重要な判断など「決める」ことを求められる立場において流動的に決裁権者が入れ替わってしまえば判断を誤ります。

 

開発範囲を決める、仕様を決める、といった「決める」仕事には判断基準となる情報が欠かせません。追加人員として後からプロジェクトに参加したメンバーは、圧倒的に情報量が足りません。これでは重要な判断はできないし、判断を任せようとするプロジェクト運営体制に根本的な問題があります。

ITベンダーとの立場も違えば担当する仕事も違いますから、人員追加についても同じ考え方ではない理由はここにあります。

 

よくあるケースは、元々ITベンダー出身で発注側企業のIT部門担当者となった人が、ITベンダーの人員計画の理屈を根拠に発注側企業で人員計画を立てて失敗してしまう例です。この場合、追加投入される人員の為に、かなりしっかりとした引継ぎと情報伝達が必要ですが、引継ぎこそ最も難しい仕事であるため、十分な引継ぎができません。発注側の人員計画はITプロジェクト成功の重要な要素でありITプロジェクト成功の生命線なのです。

 

ITプロジェクトの発注側担当者は、重要な決定権を持ちます。だからこそ、ITベンダーよりも人員計画は計画的でなければいけないはずなのに、作業負荷が増え始めてから人員を増員しようとするから失敗します。

 

途中参加によって情報が足りず判断基準が満たされないから、仕様が決められなかったり、最初の話とブレたり、迷走することになります。発注側が持つ発注者責任とは「責任を持って決めること」に他なりません。

 

ITプロジェクトにおけるプロジェクトマネジメントは、発注側と受注側、それぞれの立場で見ると違った様相に映ります。発注側の常識は、受注側の常識にはなりえず、受注側の常識は、発注側の常識にはなりえません。

 

発注側と受注側が存在する日本のプロジェクトマネジメントは、欧米から輸入されたプロジェクトマネジメントの概念をそのまま運用するだけでは不十分です。
新たなる解釈を加えた独自の概念として考えるべきものであり、一般論のプロジェクトマネジメントを妄信すべきではありません。