Sphere System Consulting ltd. スフィアシステムコンサルティング株式会社

Vol.90 システム開発を考古学的観点から考える

 コラム

システム開発を考古学的観点から考える

 

あなたは「システム開発に考古学的な観点が必要です」と言ったら驚くでしょうか。システム開発のうち、業務改革を伴うももの、いわゆる「守りのIT」については間違いなく考古学的な観点が必要になります。今回は「システム考古学」について詳しくお話します。

 

考古学とは、人類が残した遺跡などを調査し、当時の在り様を研究する学問です。
実はシステム開発の要件定義において、これとまったく同じ事が行われるのです。

 

新しい自社システムの導入で業務プロセスが変わる場合や、業務改革にともない自社の業務プロセスを見直す場合など、システム導入と業務プロセスは親密な関係にあります。

そして、システム導入は、業務プロセスをシステムに合わせるか、業務プロセスに合わせるシステムを創るか、どちらかの方法が採られます。どちらの方法でも、要件定義や仕様を決める打合せを通してシステムの仕様を決めていきますが、業務プロセスの確認も欠かすことができません。

 

この自社の業務プロセスと向き合うことが考古学そのものなのです。

 

どの企業でも、業務の方法すなわち業務プロセスは「カイゼン」を繰り返し現在に至るものです。その業務プロセスには「なぜこのようなルールになっているのか?」の理由が必ずあるはずです。

 

多くの場合、業務プロセスは担当者ごとに役割が細分化されて、「前任者からの引継ぎ」「古くからの慣習」「教わったマニュアルの通り」であるため、普段から業務プロセスそのものに疑問も持つ機会はありません。

 

現場で脈々と受け継がれる業務プロセスは「なぜこのようなルールになっているのか?」がわからないものが多数です。なぜなら、マニュアル化やルール化は便利になる反面、人が自分で考える機会を奪うことになるからです。マニュアルやルールのそもそもの成り立ちや当初の目的は時間とともにわからなくなるものであり、考える機会を失えば時間の経過と共に埋没していきます。

 

業務改革はその業務プロセスにメスを入れようとするので、もっと深く業務プロセスと向き合い、場合によってはそのルールの存在すら疑う必要があるわけです。

 

埋没した現状のルールや仕組みを掘り起し、考える機会を取り戻す作業が必要です。

このような現状の業務プロセスやルールを深く知る行為が「システム考古学」たる所以です。

 

システムの導入において、過去から現在に至る経緯や現状の把握は非常に重要です。しかし、「システム考古学」の観点を持って真面目に経緯を調査することに関して消極的な企業が多いのも事実です。

 

調査すること自体が利益を生まないことが理由の一つですが、例えば、昔の前任者からの引継ぎが適当で現状がよくわからないなどの情報を得るだけで今後のシステム導入の方針が決まるため、調査を軽視すれば想像以上に価値ある情報を失う可能性があります。

 

これまでの経緯や現状の把握を発注先であるITベンダー企業が何とかしてくれるという風潮は間違いです。ITベンダー企業はこれから創る将来のシステムについては熱心に話をしますが、旧システムの経緯は興味がありませんし、発注側企業が旧システムの課題や問題点をすべて把握している前提で話を進めようとします。発注側と受注側で認識している前提が違えばトラブルの火種を抱えたまま先に進むのと同じです。
プロジェクトが進んだ後、詳細の仕様を決める段階で問題が起きる場合は、プロジェクトの最初の最初に何らかのトラブルの火種が混入していることが多いのです。

 

システムを導入しようとする発注側の経営者は、システム開発には考古学的観点が必要という事を理解してください。この観点がシステム導入プロジェクトの全体像を描くのに必要不可欠となります。