Sphere System Consulting ltd. スフィアシステムコンサルティング株式会社

Vol.87 3倍の見積金額に価値を感じるか?

 コラム

3倍の見積金額に価値を感じるか

 

ITプロジェクトが難しいのは完成するシステムの具体的なカタチが見えないことに最大の理由があります。カタチが見えないことで投資対効果が判断しにくくなり、さらに、何が必要な機能で何が必要でない機能かが判断できなくなります。

 

システムにどんな機能を実装すべきかがまとまらないのでプロジェクトはあらぬ方向へと進み、泥沼の「デスマーチ」へと突き進みます。プロジェクトが「デスマーチ」化する原因は上流工程にありますが、なぜ上流工程が上手くいかないのかの理由は「カタチの見えないシステムに対し、対処を間違えた」からに他ならないわけです。

 

ITプロジェクトは投資資金が潤沢であれば成功するかといえばそうではありません。もちろん、予算が無いもしくは投資を抑えすぎて機能を盛り込もうとしてもダメです。

開発資金をどんどん出してしまうITプロジェクトは、あれもこれも機能を付け足そうとします。開発資金が無く、とにかくお金を出し渋るITプロジェクトは、決められた予算の中にあれもこれも機能を詰め込もうとします。
どちらに転んでも、システムの発注側企業は機能を付け足す傾向にあります。キャパシティオーバーの船は沈没してしまいますから、プロジェクトが失敗するのも当然です。
資金はありすぎてもダメ、なさすぎてもダメ、身の丈に合った資金と見合う規模のシステム開発が必要になります。

 

身の丈を計り、見合う規模のシステムを構築するにためは、実装する機能の判断が必要不可欠です。先ほど述べたように、「何が必要な機能で何が必要でない機能か」だけでなく、「いくつのステップに分けて、どの順番で要件を実現するか」まで判断が必要です。

 

機能を実装するかどうか決断を下すには、プロジェクトとしての芯の強さが試されます。導入したいシステムの目的から外れていないか、もっと大きな視点で経営理念や方針から外れていないかなどの判断基準を念頭に置いて、大局的な視点から判断を下します。
利用部門がうるさいから等に判断基準を置くと失敗します。これは利用部門を軽視するということではなく、常に大局的な視点を忘れてはならないということです。

いつの場合でも「何のために、なぜやるか」を念頭に置かねばなりません。

 

実装の判断を間違えないコツは「見積金額の3倍を払ってでも実現したい機能かどうか」を問う事です。

値段に着目するのではなく、いくらの導入金額であっても「どうやって実現するか?」の発想になれるかどうかを問う事です。

 

価格とは本来は価値とイコールではありません。システムの発注側にとって価格が高すぎる場合もあれば安すぎる場合もありますし、受注側であるITベンダー企業にとっても価格が高すぎる場合もあれば安すぎる場合もあります。

 

システムを発注する金額についてはIT業界の構造による人月単価での見積が当たり前となっていますが、従来の人月単価による見積方法には限界があります。IT業界の価格の決定は万能ではないのです。

 

ウォーターフォールやアジャイルといったシステム開発手法がありますが、どんな開発手法であっても一度きりの開発で納品して終わりではなく、ステップを分けて段階的に機能を増やしてシステムを仕上げていくやり方が安全かつ効率的なITプロジェクトの運営手法です。そのためのグランドデザインを描くにはしっかりとした根拠のある判断が必要です。

 

根拠の怪しい見積金額よりも、着目すべきは価値なのです。

 

値段の問題ではない価値に着目すると違う景色が見えてきます。システム導入のグランドデザインを描くためにも、プロジェクトマネージャーはシステムがもたらす価値を見据えることが肝要です。