Sphere System Consulting ltd. スフィアシステムコンサルティング株式会社

Vol.52 IT業界の不都合な真実 提案営業の罠

 コラム

IT業界の不都合な真実 提案営業の罠

 

ITベンダー企業は「私たちにすべてお任せください」というスタンスで営業しています。

これは、既製品であるパッケージソフトの導入であれば大きな問題はありませんが、自社向けにカスタマイズが発生する場合は要注意です。

 

ITベンダー企業から提案を受けてシステム導入を決める際、決定的に抜け落ちている概念があります。

 

それはシステムの在り方の検討です。

 

ITベンダー企業の提案はスタートが要件定義からです。どんなシステムを作るのか、どんな機能が必要なシステムなのか、それらを決める工程が要件定義です。
しかし、要件定義に入る前の前準備が必要です。前準備が無いために軸のないプロジェクトになり迷走するパターンが多いのです。

 

要件定義前の事前準備とは、経営理念からシステムの在り方を問うことです。
会社全体から見てシステムの位置付けを定義することです。

 

経営理念と言うと大仰な気がしますが、言い換えれば「将来こうありたい」という想いなので、例えば、「3年後の売上金額目標」などで十分です。システム導入については「とにかく便利になりたい」という話も良く聞きますが、それでもかまいません。

 

「将来こうありたい」という想いがなぜシステム開発に影響するのか?
それは、「将来こうありたい」という想いを言語化できていないと優先順位が変わってプロジェクトが迷走するからです。

 

例えば、「3年後の売上金額UP目標」と「業務の効率化」の2つの構想があったとします。「業務の効率化」のみに着目しシステム化を進めたとしても、「3年後の売上金額UP目標」のための実現施策が後から決まれば、そちらに重要性が傾きます。
プロジェクトに注ぐ人的リソースが限られているとしたら、「業務の効率化」のための人員が兼任になってしまい、関わりが薄くなります。そうなると、どちらも上手くいかない失敗プロジェクトになってしまいます。

 

将来こうありたい想いがシステムの在り方を創ります。
この工程は、外部のITベンダー企業には手を出すことができない領域です。
在り方を創るのは、必ず自社内でやるべき工程です。

もちろん、要件定義の中でシステムの目的について触れられます。しかし、関わりが浅すぎます。他の社内プロジェクトとこれから進めるITプロジェクトとの関連性は、ITベンダー企業にとって知る由もないのです。

 

どんなに優秀な提案をしてくるITベンダー企業であっても、システム導入の工程では必ず途中の工程からの参加になります。

 

途中参加とは、つまり、すべての事情を知っている立場にないということであり、事情を知ってもらうためにこちらから情報を開示する必要があるということです。
途中参加であるがゆえに「システムが思ってた以上に費用が掛かる!」という原因にもなります。

 

「私たちにすべてお任せください」と言う提案営業が、実は途中参加であること。これは、ITベンダー企業に丸投げしてはいけない大きな理由の一つです。
丸投げを煽るような言葉には罠があります。鵜呑みにしてはいけません。

 

ITベンダー企業でも、大事なことは要件定義以前の工程にあることは気付いています。要件定義以前の工程は「超上流工程」と呼ばれ、ここへのアプローチも論じられています。しかし、システムの発注側企業と受注側のITベンダー企業というそれぞれ異なる企業で分けて考える以上は上手くいきません。

 

なぜなら、途中参加した以降の工程を自社で受注しなければ利益にならないため、提案営業の言う「超上流工程」はどうやって自社製品へ導くかの手段にしかなりえません。
ITベンダー企業にとって「システムの在り方を検討した結果、システム導入は先送り」となっては困るのです。

 

システムの在り方を問うことをせずにITプロジェクトが成功するのは、運が良かった以外に理由はありません。これまでのやり方で上手くいったのは、たまたまITベンダー企業の担当者が優秀だったとか、運が良かったにすぎません。
しかし、ITベンダー企業も人材不足なので、良い担当者に当たる可能性はますます低くなっています。

 

それでもあなたの組織は、運任せでITプロジェクトを進めますか?

IT導入プロジェクトの主導権を自分たちで握る以外に打開策はありません。