Sphere System Consulting ltd. スフィアシステムコンサルティング株式会社

Vol.22 提案依頼書(RFP)が失敗を招く!

 コラム

提案依頼書(RFP)が失敗を招く!

 

提案依頼書とは(RFP:Request For Proposalの略、以下RFPと表記。)、システムの導入にあたって発注先候補の企業に具体的な提案を依頼する文書です。必要なシステムの概要や条件が記述されています。いわばコンペのための材料です。

 

「良いシステムを作るには良いRFPが必要である。」これは果たして本当でしょうか。実際のところ、良いRFPを作ったとしてもプロジェクトが失敗する要因は他にいくらでもあります。RFPの目的は「ふさわしいパートナー企業の選定」なので、プロジェクト成功の一つの要因でしかありません。正しく意味を理解しないと落とし穴にはまってしまうのです。

 

RFPの作成はIT導入における全体工程の一部でしかありませんし、作成後のコンペは絶対にやらなければいけないことではありません。この誤解を解かないと無駄な労力を費やすことになります。そして、なぜセオリー通りに進めているのにプロジェクトが失敗するのか?と戸惑う事になります。

 

RFPの作成はシステム調達の失敗を防ぐためのひとつの手段です。ふさわしいパートナー企業が見つかればコンペする必要はありません。「必ず、RFPを作ってコンペを行い、パートナーとなる企業を見つける必要がある。」このような認識は誤解です。
手段の目的化という言葉がありますが、RFPの作成からパートナー選定までの一連の作業は、最も手段の目的化に陥りやすい工程であると言えます。

 

RFP作成で失敗する例を挙げます。
A社プロジェクトでは、RFP作成のためにコンサルを依頼しました。そして、紙の厚さ10センチ以上のボリュームの資料を完成させます。この資料を5社のITベンダー企業に提出しコンペを行いました。そのうちの1社をパートナーとすることに決定しプロジェクトを進めることが決定します。そしてコンサルの役目もパートナー決定までで終わりました。

 

最終的にこのプロジェクトはどうなったのか?
A社プロジェクトはコストオーバーと納期オーバーの失敗に終わってしまいます。パートナー選定に多くの労力を掛けたにもかかわらず、ベンダー選定は失敗だったのでは?という声まで挙がりました。

 

このA社プロジェクトで一体何が起きたのでしょうか?
問題はRFP作成に対する誤解でした。コンサルを頼むことは良い事ですが、RFP作成のみにコンサルを入れたことがまずかったのです。さらに、コンサルをアドバイザーとして使ったのではなく、作業代行として利用してしまいました。
コンサルに資料を代行して作ってもらったとしても、自社で要件をまとめた実力ではないので、コンサルが去った後の社内の要件調整ができませんでした。他者が作った資料およびノウハウを引き継ぐことができなかったのです。

 

そもそもRFP作成が全体工程の一部なので、後の工程との整合性が必要になります。システムの要件はこのあとの工程でいくらでも変更します。発注前時点の要件が絶対ではありません。ITベンダー企業の立場からすると、重視するのは受注後に作る要件定義書であり、受注前のRFPではありません。

 

A社プロジェクトは、コンサルに丸投げした成果物を活用できず、後の工程で要件が増えたことを上手くまとめられず、失敗へ至りました。RFPはさえできれば上手くいくという想いが、その後のプロジェクト体制をしっかり整えることを怠らせました。RFP作成によるパートナー選定を他社へ丸投げで出来てしまったことによる反作用とも言えます。

 

プロジェクト全体の進行はフルマラソンと似ています。最初の10kmのタイムが自己最高タイムだったとしても、そのあと失速してしまえば意味がありません。ペースメーカーを伴走させるならどこまで必要かを考えるべきで、他にも給水のポイントなど全体を見た計画が大事になります。

 

RFP作成は全体工程のうちの序盤戦です。RFP作成だけのコンサルにメリットがあるかどうかは自社のプロジェクト運営体制が整っているかどうかを知らなければ判断できません。不用意にコンサルという名目の作業代行を発注すると失敗するだけなのです。

 

「良いRFPを作ればプロジェクトは上手くいく」は思い込みにすぎません。
プロジェクト全体から見ると、RFPの出来栄えがプロジェクトの成否を決めているのではありません。評価の対象となるべきは、社内の部門の要求をまとめ切ることができる組織力です。RFPが良い悪いではなく、社内の要件をまとめ切る力があるかどうかが重要なのです。

 

もちろん、RFP作成からのコンペを実施した方が良いプロジェクトもあります。そこには判断が必要です。何も考えず儀礼的に実施する、あるいは、各社からの提案を価格競争させたい目的の実施は考え直す必要があります。

 

RFP作成をゴールにするのではなく、社内の要件をまとめ上げることをゴールにしてください。

 

パートナー選定の作業だけで膨大な労力を要します。無駄な努力を避け、本業に活用できるスキルの獲得を目指しましょう。本業に役立つスキルとは、人材の育成であり、プロジェクトを完遂できる組織力の強化です。IT発注側企業は、部分最適に過度の投資を行うべきではありません。